この記事では、フィリピンのおすすめ映画を新旧合わせて10本ご紹介します。
フィリピンはアジアではかなり早い時期から映画製作がスタートし、海外から高い評価を受けている作品が多かったり、巨匠といわれる世界的に活躍する映画監督たちが多数活躍したりしています。
フィリピンでは映画における「表現の自由」がかなり許されており、型破りで斬新なテーマの作品や、鋭い社会批判を含んだ作品なども多数発表されています。
そんなフィリピン映画を観てみたいと思ったら、ぜひ本記事で紹介している作品を参考にしてみてください。
尚、本記事で紹介する「フィリピン映画」とは、製作国がフィリピンの作品だけでなく、製作国を問わずフィリピンを主な舞台としている作品も含みます。
映画でよく描かれるテーマ:
貧困、社会的不平等、家族、愛、犯罪、社会問題、政治、歴史など
フィリピンをはじめ、東南アジアの映画事情についてはこちらの記事をご参照ください。
奇跡の女
原題:Miracle/Himala
製作年:1982年
製作国:フィリピン
監督:イシュマエル・ベルナール
フィリピン映画の最高傑作とも言われる作品。
地方の貧しい村に母と暮らす女性エルサは、皆既日食の日に丘の上で聖母マリアを見たと証言します。
やがて彼女の噂は瞬く間に広がり、救いを求める人々が次々にエルサを訪ねて村に押しかけ、村は一大観光地さながらの盛況ぶりを見せます。
しかしそれに乗じて商売を始める者や悪事を働く者が後を絶たず、しだいに人間のエゴが蔓延し、狂気と混乱が村を覆い尽くします。
人間の根源的な欲や愚かさ、残酷さなどを描いた点で、本作が問いかけているのは不変の真理です。今見ても色褪せることのないメッセージが投げかけられています。
一方で、この作品は敬虔なカトリック信者を多く抱えるフィリピンの状況や、熱しやすく冷めやすいフィリピン人の国民性など、多くの「フィリピンらしさ」にも彩られています。
時代を超えた普遍的なメッセージを問いかけながら、その素材にはフィリピンの独自性が色濃く反映されているところが本作の興味深い点です。
1982年に既にこれほどの優れた作品が存在していたという事実には、フィリピン映画界の計り知れない底力を感じさせます。
大作にして傑作であり、もっと広く世に知られてもいい作品といえます。
普通の家族
原題:Ordinary People
製作年:2016年
製作国:フィリピン
監督:エドゥアルド・ロイ・Jr
貧富の差の大きいフィリピンでは、スラムやホームレスの存在は珍しくありません。とはいえ、道端で赤ちゃんのお世話をしているストリートチルドレンたちの光景はやはりショッキングです。
本作は、あるストリートチルドレンの若いカップルが子供を連れ去られてしまい、様々な方法で子供を取り戻そうと奔走します。果たして彼らの子は戻ってくるのか…。
ストリートチルドレンであるということは、お金や家、充分な食料がないというだけでなく、適正な判断力や生きるために必要な基本的知識も持たないということでもあります。そうした状況がますます現状から抜け出すことを困難にしているのです。
ストリートチルドレンを演じた俳優達の演技がとても自然で、路上生活者の日常の様子が非常にリアルに感じられます。
日本人の忘れもの フィリピンと中国の残留邦人
製作年:2020年
製作国:日本
監督:小原浩靖
フィリピンと中国の残留邦人をテーマとした日本のドキュメンタリー映画。
戦前、日本では海外移住が国策として推進され、フィリピン南部のダバオという地域には約3万人ほどの日本人が暮らしていました。
現地で日本人父とフィリピン人母の間に生まれた子供たちは日本人として育てられましたが、太平洋戦争が始まると日本は敵国となり、父親が日本人だとわかると激しい迫害の対象となりました。そのため、多くの人は日本人の出自を示す証拠書類は破棄せざるを得ませんでした。
残留邦人の子供たちの多くはそのまま父と生き別れ、出自を証明できないまま無国籍となり、長年多くの不自由を強いられてきました。
歴史の中で忘れ去られてしまったフィリピンの残留邦人問題に光をあてる貴重な映像資料です。
メトロマニラ 世界で最も危険な街
原題:METRO MANILA
製作年:2013年
製作国:イギリス
監督:ショーン・エリス
大都会マニラでの生活の厳しさを描いたハードボイルドな作品。
田舎暮らしで毎日の生活に苦しむ一家が一念発起し大都会マニラにやって来ますが、純朴で疑うことを知らない一家はマニラで都会の洗礼を浴びることになります。人生の厳しさを思い知った彼らは、やがてそんな大都会に染まってしまうのか、それとも…。
田舎にいても仕事がなく、都会に出てみたものの、知り合いもなく、コネもなく、仕事にありつけない。八方塞がりの状況に、とにかくやるせない気持ちになりますが、こんな世界こそ大都会の本当の姿なのかもしれません。
北(ノルテ)―歴史の終わり
原題:NORTE, THE END OF HISTORY/Norte, hangganan ng kasaysayan
製作年:2013
製作国:フィリピン
監督:ラヴ・ディアス
弁が立つ優秀な法学生のファビアンは、高慢な持論を展開しながら仲間たちと議論に明け暮れる日々を送っていました。
ある日、ファビアンは借金取りの女性とその娘を殺してしまいます。
しかし、逮捕されたのはファビアンではなく、足の不自由な貧しい青年ホアキンでした。
罪を犯して逃亡し、新たな人生を送るものの、犯した罪の深さにつきまとわれ自ら破滅へと突き進む男。
かたや、冤罪で地獄のような環境に置かれながらも、誰にも穢されない美しい心を持ち、生死すらも超越した自由な精神へと至る男。
現世での損得を基準に判断すれば、本作が描く「善人が苦しみ、悪人が生き延びる世界」は理不尽そのものといえるでしょう。
しかし、生に執着している限り地獄からは逃れられないとしたら?
劣悪な環境の中でも、心は神の領域に到達できるとしたら?
二人の男の生き方を通して、幸福とは、自由とは何なのかを考えさせる重厚な作品です。
イメルダ
原題:Imelda
製作年:2004年
製作国:フィリピン・アメリカ
監督:ラモーナ・ディアス
1965年から1986年まで約20年間フィリピンで政権を握ったマルコス大統領の妻、イメルダ・マルコス氏の実像に迫ったドキュメンタリー映画です。
イメルダ本人のインタビュー映像がふんだんに含まれており、彼女がどんな考えを持ち、何を目指して行動してきたのかが本人の口から明らかにされます。
“3000足の靴と6000着のドレス”に象徴されるように、豪華な生活と権力の私物化のイメージが強く付きまとうイメルダは、「女帝」や「悪女」といった代名詞で語られることもあります。
一方で、夫の大統領在任期間中には数々の公式行事に参加したり、フィリピンの文化発展を牽引すべく様々な活動に積極的に従事し、海外要人とも堂々とした外交を行うなど、バイタリティーに溢れた行動派として実際に多くの功績も残しました。
世間からの派手で高慢なイメージ、華々しい外交での功績、本人が語るポリシー、市民からの反応など、様々な観点からこの稀有な女性、イメルダ・マルコス氏について考えることができます。
ローサは密告された
原題:Ma’ Rosa
製作年:2016年
製作国:フィリピン
監督:ブリランテ・メンドーサ
スラムの一角で小さな雑貨屋(sari-sari store)を夫婦で営む主人公ローサは、家計の足しにほんの少しのドラッグを販売してしまったことで密告・逮捕されてしまい、人生が暗転します。
その日暮らしのギリギリの状態で生きているフィリピン貧困層の描写がリアルです。
ドラッグが蔓延るフィリピンの日常、腐敗にまみれた警察、そしてスラムに生きる人々の綱渡りのような生活といったフィリピンの側面を知ることができます。
Kalel, 15(原題)
製作年:2019年
製作国:フィリピン
監督:ジュン・ロブレス・ラナ
フィリピンでは2010年頃からHIV感染者が急増し、特に10-20代の若者世代での感染急拡大が深刻な問題となっています。統計上、フィリピンの若者の主な感染経路は売春だということもわかっています。
本作でも、HIVに感染した主人公が周囲から孤立し、先の見えない暗闇に突入していく様子が描かれています。
この映画のように、わずかな金銭のために大切な人生を犠牲にしてしまう若者がフィリピンには今も大勢いるという事実には衝撃を受けざるを得ません。
「HIVはすでに過去のもの」というイメージが覆されるショッキングな作品です。
Hello, Love, Goodbye(原題)
製作年:2019年
製作国:フィリピン
監督:キャシー・ガルシア・モリーナ
香港で出会ったフィリピン人男女の出会いと別れの物語。
フィリピンは人口の約10%が出稼ぎ等で海外に在住していると言われていますが、香港はそんなフィリピン人の主要な出稼ぎ先の一つで、約20万人のフィリピン人が働いています。
香港では毎週日曜日にオフィス街でフィリピン人達が大勢集まっておしゃべりに花を咲かせたり、時にはショーを開催したりする光景が名物になっており、映画でもそうしたシーンが何度も登場します。
フィリピン人は家族をとても大切にする国民で、多くの出稼ぎフィリピン人たちは家族の学費や生活費を稼ぐために厳しさに耐えながら海外で働いています。しかし、時には逃げ出したくなったり重責にがんじがらめになってしまうことも。
そんな多くの葛藤を抱えながらも、主人公たちが悩み抜いた末にそれぞれの決断を下していく姿は印象的です。
アントニオ・ルナ -不屈の将軍-
原題:Heneral Luna
製作年:2015年
製作国:フィリピン
監督:ジェロルド・ターログ
1898年、約300年のスペインによる統治が終了し宗主権がアメリカへ移行する中、支配が全土に及ぶ前に独立を勝ち取ろうと立ち上がったフィリピン革命の英雄の一人、アントニオ・ルナ将軍の生涯をフィクションも交えて描いた歴史大作です。
アメリカを相手に戦争を仕掛けるという決意は並大抵のものではなく、同胞たちの意志を統一し士気を維持することがいかに困難であったかを窺い知ることができます。
英雄といっても、非の打ちどころのない善人として描かれているわけではなく、頑固で血の気が多いところや、フィリピン軍内にも敵が多かったエピソードなど、人間らしい姿が描かれています。
フィリピン革命当時の張り詰めた雰囲気の中、国のために命をかけた将校たちの愛国精神が伝わってきます。
まとめ
おすすめのフィリピン映画を10本ご紹介しました。
「映画大国」とも言われるフィリピンには、本記事で紹介した以外にも実はまだあまり広く知られていない多くの秀作映画がたくさんあります。
最近では映像がきれいでキラキラとしたストーリーのフィリピン映画も多いですが、少し前の時代に多くつくられていた、「社会問題を扱った作品」も重厚で大変見ごたえがあります。
本記事を通してフィリピン映画やフィリピン社会に興味を持っていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。















