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フィリピンは親日?対日感情はどう変化したのか

Is the Philippines pro-Japan 日本とアジア
日本とアジア

「アジアの親日国」と聞いて、どんな国を思い浮かべますか?

その中に、フィリピンは入っているでしょうか?

日本を訪れるフィリピン人観光客の数は増えており、アニメや日本食などの日本文化もフィリピンで広く受け入れられています。

フィリピンは親日国の1つだと言われることも増えてきました。

一方で、第二次世界大戦後のフィリピンの反日感情は非常に強く、長らく日本人の中に「フィリピン=反日」というイメージがあったことも事実です。

本記事では、データを用いながら現在のフィリピンの対日感情の実態をご紹介します。

さらに、フィリピンの対日感情がどういった経緯をたどって現在「親日」といわれるまでに変化したのかについても解説します。

フィリピンは親日?反日?

フィリピンの対日感情は昔と今ではどう変化した?

こうしたことが気になる方は、ぜひ最後までご覧下さい。



現在のフィリピンは親日?

Filipino tourists in Japan

まずは、現代のフィリピン人が本当に親日なのかを、いくつかのデータをもとにみていきます。

日本に対する見解

アメリカの調査会社ピューリサーチセンターによると、2018年時点では83%のフィリピン人が日本に好意的な感情を持っているというデータが出ています。

Views of Japan

出典:Pew Research Center Spring 2018 Global Attitude Survey. Q17g. を元に筆者作成

日本への信頼感

また、日本の外務省が行った2021年の「海外における対日世論調査」からは、フィリピンでは日本に対して信頼感を抱いている人が他のASEAN諸国に比べても多いということがわかります。

Reliability

出典:外務省「海外における対日世論調査(令和3年度)」をもとに筆者作成

日本とフィリピンの関係

日本とフィリピンの関係についてフィリピンではどう考えられているのでしょうか。

下記のデータをご参照ください。

Relationship

出典:外務省「海外における対日世論調査(令和3年度)」をもとに筆者作成

「とても有効関係にある」「どちらかというと友好関係にある」を合わせるとなんと99%にのぼります。

フィリピンでは日比関係が良好であると考えられていることがわかります。

訪日フィリピン人観光客

そして、実際に日本を訪れるフィリピン人観光客の数も増加しています。

Filipino tourist

出典:日本政府観光局(JNTO)国籍/目的別 訪日外客数(2004年~2022年)をもとに筆者作成

新型コロナウィルス流行前まではフィリピン人観光客の数は右肩上がりに増加していました。

2023年はまだデータがありませんが、新型コロナ流行前の数値に近づいて行くものと思われます。

フィリピンの人たちが親日である理由

では、フィリピンの人たちはいったいどんな理由で日本を好意的にみているのでしょうか。

再び2021年の「海外における対日世論調査」のデータからその理由を見ていきましょう。

Image of  Japan

出典:外務省「海外における対日世論調査(令和3年度)」をもとに筆者作成

Topics of interest about Japan

出典:外務省「海外における対日世論調査(令和3年度)」をもとに筆者作成

日本に対して抱くイメージとしては技術力や経済力の高さ、伝統、自然の美しさなどがあげられ、具体的にはアニメなどのポップカルチャーや和食、ライフスタイルなどに特に魅力を感じているということがわかります。

他にも、日本は戦後フィリピンに道路、空港、鉄道などのインフラ整備援助や、政府開発援助による人材育成、技術提供、資金提供を行ってきたこともフィリピンが親日国である理由につながっていると考えられます。

こうしたデータをみると、かつて存在していた「フィリピン=反日」というイメージはすでに過去のものとなり、現在ではフィリピンは親日国の一つであると言ってもよいのかもしれません。

ただ、フィリピンが現在のように親日国であると言えるほどになるまでに、どんな経緯があったのかをみておく必要もありそうです。

戦後の反日感情

Cemetery

フィリピンは1898年よりアメリカの植民地となっていたこともあり、太平洋戦争中には「日米決戦の最大の戦場」といわれるほど激しい戦闘が繰り広げられました。

実際、約110万人もの現地フィリピン人が亡くなり、その多くは民間人でした。

フィリピンの当時の人口は約2,000万人であることを考えると、その被害はあまりにも甚大です。

一方、日本側も兵士を中心に約50万人という非常に多くの犠牲者を出しました。

こうしたことから戦後の反日感情は非常に強く、かつては「フィリピン=反日」というイメージがありました。

しかし、近年の日本とフィリピンの関係は良好であり、特に直近約20年間でフィリピンの対日感情は急激に改善したといわれます。

ただ、そこには何十年にもわたり、政府だけでなく民間レベルでも多くの人々による努力と歩み寄りの軌跡がありました。

それでは、この間に何があり、何が変わってきたのかを見てみましょう。

戦中

フィリピンは1898年からアメリカの植民地でした。

日本軍は1942年に首都マニラを占領してアメリカを降伏させ、その後3年8か月に及び軍政を行いました。

一度は撤退したアメリカ軍は1944年にレイテ島に上陸し、マニラへも進出しました。

その後、フィリピン各地では多くの民間人を巻き込む日米決戦の最大の戦場といわれる激戦が繰り広げられました。

この戦闘は1945年9月に日本が正式降伏するまで続きました。

終戦直後

甚大な被害を被ったフィリピンでは、マニラで行われた戦後の軍事裁判で日本側79人に死刑判決が下るといった非常に厳しい判決が出されました。ちなみに、日本以外で戦犯裁判が開かれたのはフィリピンだけです。

また、1951年に行われたサンフランシスコ講和会議において、会議参加国の中で最も厳しく日本の責任を追及したのもフィリピンでした。

転機

1950年代半ば頃から政府レベルでは恩赦や賠償交渉、国交回復などが少しずつ進展するようになります。

1953年には当時のフィリピンのキリノ大統領が日本人戦犯100人以上の恩赦を決定し、日本人の帰国が実現しました。これが両国の関係が和解へ向かう一つの大きなきっかけとなりました。

そして1956年には、フィリピンとの二国間賠償協定が締結され、国交も回復されました。

皇太子夫妻によるフィリピン訪問

1962年に当時の皇太子夫妻(現在の上皇上皇后両陛下)がフィリピンを訪問されたことは、フィリピンの対日感情を変化させた非常に大きな要因となりました。

この訪問に当初は現地での反発も予想されていました。しかし、実際には大きな反発はなく、現地では皇太子夫妻を歓迎する声も多かったということです。

フィリピン訪問中のスピーチの中で、皇太子殿下はフィリピンの英雄ホセ・リサールに触れながら、日本とフィリピンが将来友好的な関係を構築していくことを望むという意志を語りました。

このスピーチがフィリピンの人の心を動かし、対日感情が和らいでゆく大きな転機となりました。

また、上皇上皇后両陛下は天皇時代の2016年にも54年振りに再びフィリピンを訪問されました。

国交正常化60周年を記念する公式行事などに出席するほか、両陛下の強いご意向により、両国の戦没者慰霊も行われました。

慰霊の旅

一方、1958年からは日本政府による遺骨収集団のフィリピンへの派遣が開始され、フィリピン各地で慰霊と遺骨収集が始まりました。

そして1962年の皇太子夫妻によるフィリピン訪問による状況変化を受け、その後は日本人遺族によるフィリピンへの慰霊ツアーも開始されました。

その中で、日本人遺族はフィリピンで亡くなった家族への慰霊はもちろん、日本がフィリピンにもたらした被害への追悼も行いました

慰霊ツアーは1970年代後半をピークとし、1980年代に入ると徐々に減少しますが、僅かながら現在でも行われています。最近ではコロナ対策や遺族の高齢化に対応し「オンライン慰霊ツアー」を開催する旅行会社などもあります。

こうして、長い時間をかけた政府・皇室・民間での地道な働きかけにより、徐々にフィリピンの対日感情は和らいでいきました。



フィリピン人の声

Filipino family

最後に、筆者の知人であるフィリピン在住フィリピン人に直接聞いてみた日本のイメージについてご紹介したいと思います。

あくまで現地フィリピン人の意見のひとつだと思ってください。

インタビュー対象者:フィリピン在住 女性 (30代)

日本についてどう思っていますか?

日本はきれいだし、ご飯はおいしいし、技術は発達しているし、とてもいいところだと思っている。私の周りで日本を嫌いな人はいない。みんな日本に行きたいと言っている。

日本が戦時中に行ったことについてはどう思っていますか?

フィリピン人なら誰もが日本占領期のことを知っている。だけど、あの時代は日本がそうするしかなかったことは、私達もわかっている。日本だけでなく、世界全体がそういう流れの中にあったでしょ?だから、日本だけが特別悪かったとは思っていない。

日本に対して今も恨みの感情を持っている人はいますか?

私の周りでは、日本を恨んでいるという人は聞いたことがないけれど、自分の祖父母の世代ではそういう人もいると聞いたことはある。

あくまで一つの意見にすぎませんが、本記事前半でみたフィリピンの対日感情の統計結果とも照らし合わせると、この意見は多くのフィリピン人の多数派の意見に近いのではないかと思います。

過去に何があったかを知らないわけでも軽視するわけでもない。しかし当時の状況を理解した上で過去のこととして区別し、今は今の日本や日比関係を見ている、そんな印象です。

まとめ

現在、フィリピンは親日国の一つといえるほどに日本を好意的に感じている人々の割合が増えており、それはデータからも裏付けがとれています。

かつての反日イメージはもはや過去のものと言ってもいいでしょう。

私たちが旅行やビジネスでフィリピンにかかわる時、対日感情を気にしなくてはいけない場面はもう少なくなってきているかもしれません。

しかし、そうした状況に至るまでには、政府レベルでの交渉努力、皇太子夫妻によるフィリピン訪問、そして民間では日本人遺族による慰霊の旅でのフィリピンへの追悼といった、長い年月をかけた人々の地道な働きかけがあったことは事実です。

現在、多くのフィリピン人が日本を好意的にとらえている理由の中には、日本の文化や技術力といったソフトパワーがあげられることがあります。

それが素直に現在のフィリピンで受け入れられているのも、過去に根強く存在していた対日感情を長い時間をかけて和らげていった様々な方面からの努力の経緯がしっかりとした土台となっているからこそだといえます。

終戦直後から大きく変わったフィリピンの対日感情について、その変化の過程を理解いただけましたら幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。



参考文献

  • 井出穣治『フィリピンー急成長する若き「大国」』中公新書. 2017
  • 園田茂人『アジアの国民感情-データが明かす人々の対外認識』中公新書. 2020
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