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タイはLGBT天国?アジアのLGBTは今どうなっているのか

LGBT in Asia アジアの文化と社会
アジアの文化と社会

2020年頃から、タイのBLドラマが空前のブームです。

BLドラマの豊富さなどから、LGBTへの寛容だと認識されがちなタイですが、実際のタイのLGBTの人たちをめぐる現状はどうなのでしょうか?

また、タイ以外のアジアでのLGBT事情は?

この記事では、アジア各国でのLGBT受容度をレベル別に分類し、各国のLGBTをめぐる状況や最近の動きについても解説します。

この記事を読むことで、最新のアジアのLGBT事情とその理由となる社会背景が理解でき、タイをはじめとするアジアの映画・ドラマを観る際にも理解が深まります。



受容度別 アジアのLGBT事情

世界的にLGBTをめぐる動きが活発になりつつある昨今、アジアの国々も例外ではなく、法整備がすすんだり、LGBT関連イベントが開催されたりしています。

以下では、アジア各国のLGBTにおける受容度を3段階に分けて、アジア各地のLGBT事情をご紹介します。

〖受容度☆☆☆☆〗タイ、台湾

heart & rainbow

アジアの中でも特にLGBTへの受容度が高いのは、タイと台湾です。

どちらも、ここ数年でLGBTの権利拡大に向けた法整備がすすむなど大きな進展が見られました。

タイのLGBT事情

タイは日常の中で、レストラン、デパート、スーパー、美容院など様々なところで働くトランスジェンダーの人々を目にします。

このように聞くと、タイはLGBTには寛容な社会であるように思えますが、実態はもう少し複雑です。

タイでもLGBTの人々への法的・社会的な差別は根強く存在しています

一見するとわかりにくいですが、LGBTの人々は多くの葛藤を抱えており、また周囲からの圧力や差別も感じています。

たとえば、タイではLGBTの人が就くことのできる職業には制限があります

その代表的な職業は教職や医師、官職です。

タイではたとえ優秀な大学を卒業していても、トランスジェンダーであるという理由で教員採用試験すら受けられないというケースがよくありました。

また、トランスジェンダーや同性愛者などの性的マイノリティーの人々については、学校の教科書に「精神異常」などといった極めて差別的な表現が使われていたこともありました。

仏教徒が多いタイでは「前世で罪を犯した結果、現世でLGBTになった」と信じる人も少なくないともいわれます。

ただ、性的マイノリティを支援する団体などが声を上げ続けたり、当事者が差別に対して裁判に訴えたケースなどが契機となり、現在ではLGBTに関する法律も着々と成立しています。

法制度では、タイは2015年にジェンダー平等法が成立しました。

これにより、性的マイノリティへのあらゆる差別が禁止され、第三者により差別を客観的に審査し、罰則を課すことも可能となりました。

また2020年7月にタイ政府は、同性カップルの結婚を事実上認める「市民パートナーシップ法案」を承認したと発表しました

この法案は、厳密には同性婚を認めるものではありませんが、同性カップルが養子を迎える権利や、配偶者の財産を相続する権利を認める内容となっています。

今回の法案が成立すればタイは台湾に続いてアジアで2番目に同性カップルの権利を認める国となります。

我々が「タイはLGBTQに寛容な社会だ」と認識するのは、比較的目につきやすいサービス産業などの職業でLGBTの人達が活躍している姿が多く見られるからだと思われます。

ただ、そうしたLGBTの人々が活躍する職業もある一方、医師や教員などLGBTは就くことが難しい職業もあります。

また、個人レベルでは、実は他者からの差別や批判にさらされて不自由を強いられているというケースも多いです。

LGBTの天国と言われるタイですが、LGBTの人々が自分らしく生きるにはまだ多くの制限が残っており、権利は十分ではありません

台湾のLGBT事情

台湾はLGBTQに関して大きな動きが近年ありました。

アメリカ全土で同性婚が合法になった2015年に、台湾の高雄市でも同性パートナーの登録制度が始まり、台北市など他の都市でも類似の登録制度がはじまりました。

そして、2019年5月にはアジアでは初めて台湾で同性婚が合法化され、半年で約2500組の同性カップルが正式に結婚をしました。

この同性婚の合法化は、2017年に「民法が同性婚を認めていないのは違憲だ」とする判決を裁判所が出したことにより、違憲状態を解消する立法措置をとるために成立した「特別法」です。

民法の改正ではなく特別法としたのは、民法改正についての保守派からの反対意見も鑑みた結果です。

2016年に台湾初の女性総統となった蔡英文氏は、同性婚の合法化を支持して性的マイノリティの支援をマニフェストに含めていました。

そんな台湾ですが、戒厳令の布かれていた1987年までは同性愛はタブーとされ、同性愛者であるというだけで逮捕されていた時代もありました。

しかし戒厳令解除後には民主化や女性の権利拡大を求める運動とともに、性的マイノリティーの人々の権利を求める運動もさかんになりました。

2003年には台湾で初めて性的マイノリティへの理解を伝える「プライドパレード」が台北市で開催され、約2000人が参加しました。同性婚が合法化した2019年には参加者が20万人を超え、アジア最大規模のLGBTを讃えるイベントとなりました。

2004年には「性別平等教育法」がつくられ、学校内でのLGBTなどへの差別を禁止し、性の多様性について学ぶ授業も義務化されました。

一方、宗教団体などを中心とする保守派からはLGBTの権利拡大への反発も当然あり、そちらを支持する意見も無視できないほど大きくなっています。

アジアで初めて同性婚が合法化されたという理由から、台湾はLGBTの人々が生きやすい社会に見えるかもしれませんが、実は反対派の数も非常に多く、状況は不安定で、LGBTの権利拡大に向けた動きはいつ後退してもおかしくないという現状です。

〖受容度☆☆☆〗フィリピン、ベトナム

pride parade

フィリピンとベトナムは、アジアの中ではLGBTの受容度は中程度だといえます。ただ、この二カ国の状況は対照的です。

フィリピンはLGBTへの社会的な受容がすすんでいる反面、LGBT関連の法的整備は遅れています。

一方ベトナムでは、政府はLGBT関連の法的整備に積極的ですが、人々の間でLGBTへの偏見が根強く、社会的な受容のスピードはゆっくりです。

フィリピンのLGBT事情

フィリピンは実は性的マイノリティへの社会的受容度が高い国のひとつです。

スペインによる植民地化以前は、フィリピンの先住民コミュニティや地方のコミュニティなどにおいて「多様な性」が存在していた記録が残っています。

しかし1565年からの約300年間のスペインによる植民地時代にカトリックが導入され、同性愛が「宗教上の罪」として禁じられていました。

その後、1960年代の欧米を中心とする性的マイノリティの解放運動の高まりを受けて、フィリピンでも性的マイノリティは再び認められるようになりました。

アメリカによる植民地経験があるフィリピンでは、独立した現在も他の東南アジアに比べて欧米文化からの影響を受けやすい特徴があります。

現在、フィリピンの映画やテレビ番組にはLGBTの人々の存在が欠かせず、ひとつのサブカルチャーとなっています。

テレビ番組などでは明るく描かれることも多いLGBTの人々ですが、国民の多数派がカトリックのフィリピンではLGBTへの偏見もあり、実際には生きづらさを抱える人も少なくありません。

フィリピンでは1990年代から性的マイノリティー達の解放運動が盛んになり、首都マニラでは、アジアで初めて1994年の6月に「プライドパレード」が開催されました。以降、毎年6月末にパレードが開催され続け、アジアでの最長記録を更新中です。

社会的には比較的LGBTが受容されているフィリピンですが、法的整備では遅れています

2014年にケソン市でLGBTへの一切の差別を禁止する「条例」が可決されました。しかし、「法律」としてはLGBTの権利を認める法案は何度も提出されたものの、カトリック教会などの強い反発を受けて未だに何も成立していません。

フィリピンのLGBTは、社会的にはかなり受け入れられていますが、法整備に関しては宗教的な反発があることからかなり遅れをとっているという状況です。

ベトナムのLGBT事情

法的権利やLGBT関連の活動などから考えると、ベトナムもLGBTに関しては厳しくないといえます。

十分とはいえないものの、ベトナム政府はLGBTの権利拡大に積極的に動いてきました

ベトナムでは刑法において同性愛を犯罪と扱ったことはなく、2015年には同性同士の結婚禁止規定を廃止した改正婚姻家族法が施行され、同性カップルが同棲することが公に認められました。

さらに、ベトナム政府はLGBTの人びとの権利を尊重するという世界的シフトにも同調路線を取り、LGBTの人達の権利支持を表明してきました。

ベトナムが国連人権理事会の理事国だった2016年には、政府は性的指向および性自認に基づく暴力および差別からの保護に関する決議に賛成票を投じたこともあります。国連ベトナムは、2012年から毎年LGBTの平等な権利を求める活動「ベトプライド」というイベントを開催するなどして改善を図ろうとしています。

一方、政府の積極的な動きに対して、ベトナム社会全体ではまだLGBTへの偏見が残っています

ベトナムには家族や伝統に儒教の考え方が根付いてることが影響し、LGBTQへの理解が広がるのには時間がかかりました。

2000年代はまだ多くの人がLGBTの受け入れには拒否感を抱いており、2010年代頃から少しずつLGBTQへの理解が進んできたという状況です。

しかし今でもベトナム社会には、「同性愛は病気」という誤った認識を持つ人が一定数います。

また、教育現場ではLGBTの生徒に対する言葉などの嫌がらせが日常的にあるようです。LGBT理解の教育がほとんど行われていないことから、性的指向や性自認への誤解を持った教師や生徒がLGBTの生徒などへ差別的な言動をする事例が起こっています。

ただ、ここ数年でメディア業界のLGBTコミュニティに対する認識は大きく変わり、改善されつつあります。

〖受容度☆☆〗インドネシア

monkeys

イスラム教徒が多いインドネシアやマレーシア、ブルネイなどは、「イスラム教の教えに反する」と言う理由でLGBTへの寛容度は低いと言えます。

ただ、その中で世界最大のムスリム人口を抱えるインドネシアは、意外にもLGBTに関して少し包容力があります。

インドネシアのLGBT事情

国民の約90%がムスリムであるインドネシアは、宗教の影響や婚姻に関して社会からの圧力が根強い一方、LGBTの人々がメディアへ出演したり、LGBT関連イベントの開催を政府が容認するなど寛容な一面もあります。

インドネシアのLGBTに関する法令では、成人間の同意による私的で非商業的な同性関係は制限されていません。

異性装自体は違法とされてはいるものの、美容産業や芸能産業に従事するトランスジェンダーの人々に対してはそこまで厳しい取り締まりはありません。

ただ、彼らを差別やハラスメントから保護する法的制度もありません。

そんなインドネシアには、LGBTの人たちが生きられる居場所もわずかに存在しています

たとえばジョグジャカルタでは、トランスジェンダーのムスリム達のコミュニティがあります。

通常、公共のモスクでの礼拝は祈りの場所が男女別に分かれており、トランスジェンダーのムスリム達は周りから奇異な目で見られてしまいます。

また、トランスジェンダーゆえに家族からも虐げられて十分な教育を受けられなかった人もいます。

そんな人達のために、トランスジェンダーのムスリム向けに祈りの場所を提供したり、コーランの授業を行ったりする自助コミュニティがあり、その中でひっそりと生きている人々がいます。

他にも、スラウェシ島のブギス社会では、生物学的には男性でありながら性自認は女性である人々は「チャラバイ」という第三のジェンダーとして位置づけられています。

ブギス社会では「チャラバイは結婚式ビジネスを担う」という社会的役割が与えられており、チャラバイであることは職業も兼ねた一つの「認められたコミュニティ」なのです。

さらにチャラバイコミュニティは流動的で、たとえば自身の性自認が途中で変わった場合にはチャラバイコミュニティをやめることも可能であるなど、柔軟性があります。

広大な領土に多くの民族が暮らし、多様性に富むインドネシアならではの懐の大きさを感じます。

とはいえ、インドネシア全体としてはイスラム教の保守的な規範は広く社会に浸透しており、LGBTの人々は地元の宗教法や過激派グループからしばしば標的とされることも事実です。ここ数年でインドネシアがイスラム保守に傾いていることもLGBTの人々への風向きを強くしています。

中でもアチェ州は、インドネシアで唯一イスラム法シャリーアに基づく州条例を制定しており、他の州に比べて特に厳格なイスラム的生活様式が求められます

シャリーア法において同性愛は「社会規範における良識や宗教および法規を破る堕落行為」にあたり、公開でのむち打ち刑などの非常い厳しい刑が執行されます。

LGBTを厳しく取り締まる地域がある一方、比較的寛容な地域もあるなど、多様性に富むインドネシアらしく、地域によりLGBTへの社会的な受け止め方は様々です。

〖受容度☆〗マレーシア、ブルネイ

brunei night

マレーシアやブルネイは、インドネシアよりさらにLGBTの人々への待遇は厳しいというのが現状です。ここでは、マレーシアの現状をご紹介します。

↓ブルネイについてはこちらの記事をどうぞ

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マレーシアのLGBT事情

一般のマレーシア人はLGBTにも比較的寛容な人が多いものの、法律はLGBTに厳しいものがあることから、警察による摘発などもあります。

マレーシアの法体系は、イギリス植民地時代に整備された世俗法と、ムスリムにのみ適用されるシャリーア法の二重になっています。

ムスリムは結婚や親権など家族や個人の生活に関する部分についてはシャリーア法に従い、他の宗教の信者は世俗の法律に従います。

マレーシアの世俗法とシャリーア法は、どちらも同性愛行為を違法としています。さらにシャリーア法では全ての州でムスリム男性が「女性のような服装」をすることも禁じられています。

LGBTの人々は、こうした法に則って逮捕されることもあり、有罪となった場合は罰金や懲役刑、むち打ち刑などの厳しい刑が執行されることがあります。

LGBTの人がメディアに出演することもほとんどありません。また同性愛描写のある映画などは上映することはできません。

さらにLGBTの人たちは雇用、医療、教育面で差別を受けることもあります。イスラム教保守派からの反対も多いです。

マレーシアでのLGBTの人々に向けられるこうした厳しい態度には、人権団体やNGOからの抗議を招くこともしばしばあります。

世界人権宣言が認めた差別禁止、プライバシー、表現の自由、移動の自由に関して国際的に保障された権利を侵害するものであるという指摘や、マレーシア連邦憲法の表現の自由(10条)、平等な取扱い(8条)、移動の自由(9条)への権利にも反するといった指摘です。

ただこれまでのところ、国としてはLGBTの価値観を認める方向にはあまり動いていません。

まとめ

アジアのLGBT事情は、受容度の高いタイや台湾、中程度のフィリピンやベトナム、受容度の低いインドネシア、さらに低いマレーシアやブルネイなど、その状況は段階別に分かれます。

社会的には寛容であっても、カトリックやイスラム教、儒教などの宗教的な観点からLGBT受け入れには保守的な勢力がある国がある一方、ベトナムのように社会よりも政府が法整備などに積極的な例もあります。

多様性あふれるアジアはLGBTをめぐる状況も様々ですが、しかしどの国も国際的な動きに少なからず連動して、社会認識や法整備が少しずつ変わりつつあることは事実のようです。

最後までお読みいただきありがとうございました。本記事がアジアのLGBTQ事情を知る際のお役に立てれば幸いです。



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