朝ごはんは、そこに生きる人々のライフスタイルが色濃く反映されていておもしろいですよね。
朝しか食べることができない美味しいものがあったり、日本人からすると意外ものを朝から食べていることもあったりと、自由で楽しいアジアの朝ごはん。
そんなアジアの朝ごはん事情をご紹介します。
アジアの朝ごはんの共通点
アジアの朝ごはん事情には、いくつかの共通点があります。
1.アジアの朝は早い
暑い地域が多いこともあり、アジアの朝は早いです。
学校や会社は日本より早い時間に始まるところも多く、公園では朝から太極拳、エアロビ、ダンス、ジョギングなど元気に活動している人がたくさんいます。
また、アジアにも多いイスラム教徒たちは1日5回のお祈りがあり、1番早いお祈り時間は日の出前の朝4時頃です。
一方、仏教徒の多いタイ、ラオス、ミャンマーなどでは、朝早くから修行僧による「托鉢(たくはつ)」が毎朝あるため、やはり4時頃には起床しています。
アジアはみんな超早起きで、朝から活動的なのです。
2.朝から外食しがち
アジアの家庭は共働きが多く朝から忙しいので、家で作るよりお店で食べたり買ったりした方が効率的だと考えています。
アジアでは食堂やローカルなコーヒーショップが朝から人で一杯な光景もめずらしくありません。朝早くから開店して昼頃には営業を終えてしまうお店も多いです。
3.朝ごはんは持ち帰りOK
朝ごはんはお店で食べる以外にも、通勤・通学途中で購入したものをオフィスや学校で食べる習慣も一般的です。そのため、ほとんどのメニューは持ち帰りに対応し、麺類やソースもうまく持ち帰れるように包んでくれます。
日本では、朝ごはんをオフィスのデスクで食べるだなんてちょっと躊躇してしまいますが、アジアだったら全然アリなんですね。
それでは、アジア各国ではどんな朝ごはんが食べられているのか、みていきましょう。
台湾の朝ごはん
台湾は1950年代の高度経済成長期に入ると共働きが増え、働く女性の半分が子育て中でもある現在では、なんと7割もの人が朝食を外で食べています。
台湾の朝ごはんは大きく分けて、「台湾式」「中国式」「台湾風西洋式」の三種類です。
- 台湾式…もともとの台湾の朝食スタイルであるお粥などお米が中心。
- 中国式…戦後に中国大陸から入ってきた、豆乳や肉まんなどの朝食。
- 台湾風西洋式…パンやサンドイッチなどの朝ごはん。具はやはり台湾風。
豆漿(トウジャン)と油條
「中国式」朝ごはんに分類され、台湾のガイドブックには必ず紹介されているメニュー。豆漿(トウジャン)は、塩味の豆乳にお酢を加えておぼろ豆腐のようにしたもので、そこに油條という揚げパンを浸して食べます。もともとは中国の山東省にあったメニューで、戦後になって台湾に豆漿のお店ができ始めました。
サンドイッチ
サンドイッチは台湾のテイクアウト朝食の定番です。
伝統的な台湾のサンドイッチは、三角形で全体的にピーナッツバターが塗られていたり、卵やキュウリの定番の具以外に肉でんぶやナッツ類などが入っています。
また最近では若い世代が運営するサンドイッチ屋さんが増え、炭火で焼いたトーストにバーベキュー肉やふわふわオムレツなどを挟んだサンドイッチをなど売るお店も増えています。気軽に買えるので、台湾に行った時に簡単に試すことが出来そうです。
蛋餅(台湾式クレープ)
強力粉と薄力粉で作った生地に、ニラ(またはネギ)、卵、ハムやチーズなどお好みの具を挟んで三つ折りにして焼いた、甘くないクレープです。油で揚げたバージョンもあり、お店によって生地の触感(モチモチ、パリパリなど)に個性があります。
台湾ではこの他にもお粥、肉まん、麺類などが朝食で食べられています。
香港の朝ごはん
香港といえばお粥。
豊富な食材を使った香港のお粥は、医食同源、つまり「日頃からバランスのとれた食事をとることによって病気を防ぎ、治療する」という中医学の考えに基づいている理想的な料理です。
その一方で、イギリス領だった香港には香港独自の西洋式の食文化も浸透しています。
お粥
香港のお粥は、フードプロセッサーなどで細かくしたお米を、干し貝柱や鶏のスープでしっかり煮込んで作られるため、見た目はあっさりしていても味には奥行きとコクがあります。
白粥のほか、塩漬けの豚肉とピータン、鶏肉、魚の切り身など種類も色々あります。
茶餐廳の朝ごはん
香港には茶餐廳(チャーチャンテン)という香港独自の形態のお店があります。
これは、ファミレスと喫茶店の中間のような位置づけで、喫茶メニューの他に、洋風や中華風の軽食が楽しめる、ローカル感あふれるお店です。早朝から深夜まで営業しており、お年寄りから若者まで誰からも愛されている特別な空間です。
そんな茶餐廳で朝の時間帯にサクッと食べられる朝食メニューをご紹介します。
- パイナップルパン
表面にクッキー生地を載せて焼かれたサクサクした触感の甘いパンで、厚切りのバターを挟んで食べると、パンの甘さとバターの塩加減が絶妙。表面がパイナップルに似ていることからその名前になりましたが、パイナップル成分は入っていません。どの茶餐廳にもある定番メニューです。
- マカロニスープ
約30年前から親しまれている国民的朝食メニュー。いまや、お粥よりもマカロニスープの方が香港の朝食の定番だという人もいるほど。香港のマクドナルドの朝食メニューにも登場しています。マカロニス―プの具は、ハムやチャーシューやベーコンなど、お店によって少し違います。
シンガポールの朝ごはん
シンガポールも共働きが多く、外食文化が浸透しています。
しかも2020年にユネスコの無形文化遺産に登録された「ホーカー」という清潔で安い食堂があちこちにあるので、朝・昼・晩すべて外食することも珍しくありません。
カヤトースト
カヤトーストは、トーストした食パンにスライスしたバターと「カヤジャム」というジャムを挟んで食べるシンガポールの代表的な朝食メニュー。
「カヤジャム」とは、ココナッツミルク、卵、砂糖、パンダンリーフから作られた東南アジアで定番のジャムです。温泉卵とコンデンスミルク入りのコーヒー(コピ)と一緒にカヤトーストを食べれば、完璧なシンガポールスタイル。カヤトーストは朝だけでなく、おやつに食べることもあります。
お粥
中国系の住民が多いシンガポールでは、お粥も一年中よく食べられています。
鶏や魚などでダシを取り、具と米がとろとろになるまで煮込んで作ります。見た目はシンプルですが、しっかりとした味で食べ応えがあり、量もたくさんあるので満足度も高いはず。
香港のお粥に近いイメージで、日本のお粥よりももっとじっくり煮込まれて、お米の形状が残っていないタイプのお粥です。
マレーシアの朝ごはん
多民族国家マレーシアは、朝食も民族色が豊かです。マレー系、中国系、インド系などそれぞれのスタイルの朝食があります。
マレーシアの三大朝ごはんは、ナシルマ(マレー系)、肉骨茶(中国系)、ロティチャナイ(インド系)です。
通勤前に食堂で朝食をとっていく人や、通勤途中に食堂で買ってオフィスで食べる人も多いです。
ナシルマ
マレーシア人がこよなく愛するマレーシアの国民食。
ナシルマは、ココナッツミルクで炊かれたごはんに、サンバルという辛いソース、ゆで卵、キュウリ、小魚などが添えられているセット。
一瞬、馴染みのあるごはんのように見えますが、ココナッツミルク風味のごはんは、私たちが想像するそれとは触感も風味も味も違います。
でも、このナシルマを朝から食べて「おいしい!」と感じられるようになれば、きっとマレーシア通。
肉骨茶(バクテー)
漢字で書くと「肉骨茶」と書くバクテーは、字面だけでなく見た目もインパクト大。
漢方で豚肉を煮込んだスープで、中国系の人たちが大好きな朝ごはんです。(マレー系などムスリムの人たちは豚肉であるバクテーは食べません。)
もともとは、肉体労働に従事する中国系移民がエネルギー補給のために朝から食べていた料理です。
漢方の香りのする黒いスープに、大きなスペアリブの塊が入っているという、かなりごつい見た目なのですが、食べてみると体に沁みるスープのおいしさに感動する、朝から元気になれる朝ごはんです。
ロティチャナイ
おもにインド系のお店で食べられる、小麦粉で作られたクレープのような薄焼きのもっちりサクサクのパン(ロティ)にカレーをつけていただく朝ごはん。しかも安いです。
ロティにはチーズやパイナップルなど具入りを選べることもあります。
店頭でロティチャナイ作りをしている職人が、生地をうすーく伸ばしてアクロバティックに焼く姿は、どのお店でも見られる楽しい光景です。
ベトナムの朝ごはん
ベトナムも朝は外食が中心で、ささっとすませる人が多く、麺などが中心。多すぎないサイズ感で、お腹にも優しいヘルシーなメニューが多いので、日本人にもなじみやすいと思います。
フォー(鶏肉、牛肉)
ベトナムでは朝の路上にたくさんのフォーの屋台が現れます。ベトナムは南北に細長いため、北部と南部とではフォーにも違いがあります。
北部のフォーは牛肉のフォーが多く、具は少なめでスープもあっさりしたもの。生のネギやもやしをトッピングし、ハーブ類は控えめです。
一方で南部のフォーは、鶏肉のフォーで、甘めのスープにハーブ類をふんだんに載せていただきます。ライムや唐辛子も加えて味の変化を楽しむスタイルです。
バインミー
フランス統治の名残でおいしいパンが食べられるベトナムでは、バインミーというベトナム風サンドイッチが生まれました。
やわらかめのバゲットに、パテやなます、生野菜やチャーシューなどを挟んでパクチーを載せたサンドイッチで、地域により具や味付けに違いがあります。
たくさんの種類の具が入っているのに、不思議と味に一体感があり、やみつきになる人続出のベトナム名物です。
ほかにも、おこわ、お粥、豚肉のせごはんなどが食べられています。
タイの朝ごはん
タイでは、朝ごはんは家で食べる人と、屋台などを利用する人に分かれます。
小さい子供から高校生くらいまでの学生は家で朝ごはんを食べることが多いですが、大学生や会社員は朝ごはんを外で買って学校や職場で食べる人が多いようです。
通勤途中の屋台や市場で購入したり、家から持ってきた朝ごはんを職場で同僚とシェアしながら食べることもあるようで、まるでランチタイムのようににぎやかで楽しそうです。
ジョーク(タイ風お粥)
お米を細かく砕いて、さらにどろどろになるまでしっかり煮たお粥です。そこに生卵、豚肉団子、ショウガ、パクチーなどが入り、最後はタイらしく、各自が好みの調味料で味付けしていただきます。
パトンコー(揚げパン)
タイでは朝から揚げパンを食べることもあります。お粥に浸して食べたり、コンデンスミルクを付けたり、コーヒーと一緒に食べたり、台湾のように豆乳と一緒に食べたりと、食べ方は人それぞれ。
ムーピン(ブタの串焼き)とカオニャオ(もち米)
タイでも、朝からすごくエネルギーの出そうなものを食べています。豚の串焼きの他にも、鶏の唐揚げや豚の唐揚げも朝の屋台で売られていて、もち米とセットでいただくのがタイ流です。
インドネシアの朝ごはん
インドネシアは大小多くの島から成り立っていて、地域により民族も文化慣習も大きく異なるため、インドネシアの朝ごはんスタイルを定義するのは難しいです。
ここでは例として、ジャワ島でよく食べられている朝ごはんをご紹介します。
インドネシアは他のアジアと比べると、家で朝食をとる人の割合が比較的多い傾向にあります。
ナシゴレン
前日のごはんが残っているときは、ナシゴレン(インドネシア風チャーハン)にして朝ごはんに食べることがあります。
ナシゴレンは朝だけでなく、昼でも夜でもいつでも食べることができるおなじみのメニューです。
卵、赤玉ねぎ、にんにく、唐辛子などを具にして作られます。目玉焼きはのっていたりいなかったり。
ブブールアヤム(鶏肉入りのお粥)
お粥の上に、鶏肉、フライドオニオン、揚げパンや香味野菜などが載せられている具沢山のお粥です。屋台やお店でも食べることが出来ます。
他にも、インスタントラーメン、バナナやサツマイモを揚げたもの、トーストやサンドイッチなど、住んでいる地域や生活環境によって様々です。
まとめ
アジアではみんな驚くほど朝早くから活動し、それに伴ってたくさんのお店が営業しています。おいしい朝ごはんでしっかりエネルギーチャージをしているから、アジアの人は朝からあんなに元気なのかもしれません。
ちなみに、お粥はほとんどの国で朝ごはんとして食べられているアジア共通の朝ごはんメニューですが、味付けや具などにその国のオリジナリティが出ていて、アジアのお粥の食べ比べをしてみてもおもしろそうですね。
日本の外食産業は昼または夜の営業がメインのお店がほとんどですが、ライフスタイルの異なるアジアの国はお店も朝が早く、アジアの外食産業は朝が中心といっても過言ではないでしょう。
朝からおいしくて元気の出そうな朝ごはんを食べられるなんて、とてもうらやましいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
↓アジアのコーヒー事情についてはこちらの記事をご覧ください。
↓アジアのお茶についてはこちらの記事で紹介しています。