日本ではまだあまりなじみのないものの、アジアではとてもさかんなスポーツがあります。
オリンピック、アジア競技大会、SEA Gamesなどの大会でそうした競技を目にする機会があるかもしれません。
この記事では、アジアで生まれたスポーツや、アジアで特にさかんに行われているスポーツについてご紹介します。
1951年に始まり、4年に1度開催されるアジア地域のスポーツの祭典。1986年からは冬季アジア競技大会も行われています。アジア以外の地域にはこのようなスポーツ大会はありません。
東南アジア地域の友好、理解、平和を目的に1959年から2年ごとに開催されています。東南アジア以外にはあまり知られていないものの、地域内での盛り上がりはかなりのもの。
アジアでさかんなスポーツの特徴
スポーツにはそれぞれの地域の価値観が反映されています。
アジアで生まれたスポーツにはどのような特徴がみられるのでしょうか。
- 武器や道具を使わないものが多い
- 精神的な訓練につながるものが多い
- 足技が多い
歴史的に大小の争いの多かったアジアでは、戦場で戦った時に武器を落としたとしても素手でも闘える護身術として武術が誕生したためだといわれています。
それらの中には「アジア的な価値観」が込められているものも多くありました。
アジアで生まれたスポーツ
アジアで生まれ、いまやアジアから世界に広がったスポーツには下記のようなものがあります。
テコンドー
アジア全域で広く行われていますが、ヨーロッパやアメリカにも多くの競技者がいます。
もともと朝鮮半島にあった「テッキョン」という足技中心の伝統武術に、日本の空手のこぶしや足蹴りなどの技が融合し、1955年にテコンドーとして生み出されました。
回し蹴り、前蹴り、ひねり蹴り、回転蹴りなどの足技の攻撃が中心ですが、攻撃が認められているのは上半身のみです。
1971年に韓国の国技となり、2000年からはオリンピック正式競技にもなっています。
ムエタイ
ムエタイも足技が中心の格闘技ですが、ボクシングのようにグローブをつけてリング上で競技します。キックだけでなく、肘打ちや膝蹴りなども認められています。
ムエタイは試合前に「ワイクルー」という戦いの舞を踊るのが特徴的です。
これは周りの人への感謝を示すもので、タイの宗教や精霊への祈りも表されていると言われています。
実は、日本ではムエタイは「キックボクシング」として紹介されたため、キックボクシングの知名度の方が高いかもしれません。
ちなみに、K-1は日本で空手とキックボクシング(ムエタイ)のルールを融合させたものでもあります。
モンゴル相撲(ブフ)
モンゴル出身の力士が多いことからもわかるように、モンゴルではモンゴル相撲が国民的スポーツです。モンゴル相撲は紀元前から行われていたほどの長い歴史を持っています。
日本の相撲と同様に一対一で組み合いますが、土俵はなく、足の裏以外の体の一部が地面につくと勝敗が決まります。
野外の広い草原で行われることが多く、入場時や試合に勝った時にはモンゴルの強い動物(鷹、馬、牛など)の動きをまねた舞を披露します。
自然と調和した要素が見られる点はモンゴルのお国柄を反映しているようです。
モンゴル相撲は衣装も特徴的で、帽子、長袖チョッキ、パンツ、ブーツを身に付けて行います。
衣装は少し異なりますが、内モンゴル自治区でもモンゴル相撲は同じようにさかんに行われています。
シラット
口承で伝わったためにはっきりした起源は不明なものの、6世紀頃にはすでに実践されていたことがわかっています。
東南アジア全般で広く実践されていますが、特にインドネシアとマレーシアが中心地で、それぞれに多くの流派を持ちます。
マレーシアではシラット、インドネシアではプンチャック・シラット(またはプンチャック)と言われます。
シラットの試合には2つの種類があります。
- 「型」を演じてその美しさや正確さを競うもの
- シラットの型をベースに突きや蹴りを繰り出すもの
『ザ・レイド』などシラットが登場する映画もありますが、そうした映画で登場するシラットは主に後者の方です。
シラットには精神修行の側面もあり、呼吸法や瞑想または日々の訓練を通して集中力、礼節、自己制御などを身につけていくことが意図されています。
インドネシアのプンチャックシラットとマレーシアのシラットは、2019年12月にユネスコ無形文化遺産に登録されました。
セパタクロー
ネットを設置したコートで手を使わず、サーブ、レシーブ、トス、アタック、ブロックなど、すべて足と頭だけでボールを打ち合うアクロバティックなスポーツです。
「足のバレーボール」ともいわれます。
またバレーボールと違い、基本は3人1組で対戦します。3タッチ以内に相手コートにボールを返しますが、1人で連続タッチすることも可能です。
セパタクローのボールは、もともとは藤の紐を編んで作られたボールを使っていました。見た目も美しく、マレーシアなどでは土産物としても人気です。現在はプラスチックの籠状のボールになりました。
世界でもアジアでも人気のスポーツ
発祥地はアジアではないものの、その人気や世界ランキングでアジア勢が上位に位置しているスポーツもあります。
バドミントン
世界でもアジアでも人気なスポーツのひとつがバドミントンです。
バドミントンの国別世界ランキングでは、中国、日本、インドネシア、タイなどアジア諸国が上位を独占しています。
もともとはイギリスで始まったスポーツでしたが、イギリスによるアジア統治時代にバドミントンがアジアに広まったといわれます。
特にインドネシアはバドミントンが国技になっており、ほとんどの人が熱狂する国民的スポーツです。
インドネシアの集落や家の庭にはバドミントンコートがあることが多く、小さな頃から日常的にバドミントンに親しんでいます。
eスポーツ
eスポーツは、PCゲームやビデオゲームで行うスポーツ競技を指します。
日本でもここ数年よく耳にするようになったeスポーツですが、アジアはeスポーツ市場が活況な地域の1つです。
eスポーツは2022年アジア競技大会でも正式種目に決定し、アジアでのその定着ぶりがうかがえます。
例えば韓国は2000年頃から徐々にeスポーツに力を入れ始めました。eスポーツがテレビ中継されると多くの人がテレビ観戦に熱中し、またeスポーツ用の大規模競技場が建設されるなど、国家規模でeスポーツの普及がすすみました。
また、中国は現在アメリカに次ぐ世界第2位のeスポーツの市場規模を有しています。もともと人口の多い中国はPCゲームを好む人口も多く、それがeスポーツプレイヤーの多さに繋がりました。国家の競争力強化の一環としてもeスポーツに力を入れています。
さらに東南アジアでもマレーシア、シンガポール、フィリピンでもeスポーツは人気です。
日本では家庭用ゲーム機が広く普及していたため、eスポーツに目が向けられるようになったのは比較的最近ですが、アジアの他の地域では随分前からeスポーツがじわじわと人気を得ています。
まとめ
本記事ではアジアでさかんなスポーツについてこ紹介しました。
アジアでは伝統的に素手を使う格闘技が多く生まれましたが、それぞれの競技にはアジア各国が重視する精神面や伝統といった特徴が強く反映されています。
そうしたスポーツの多くは今や世界でプレーされており、同時にそのスポーツの根底にある価値観も世界に広がっているといえます。
また、比較的新しいeスポーツはアジアでの競技人口が多く、世界的に活躍するeスポーツ選手が今後どんどん増えてくるかもしれません。
今後のアジアのスポーツ事情がどう変換していくのか楽しみですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
参考文献
- 友添秀則監修『世界のスポーツ〈4〉アジア』2005. 学習研究社