アジアは日本から比較的距離が近く、文化的にも親しみを感じられることが多いかもしれません。
しかし、アジアにはタブーとされていることが多く、知らないと危険な目にあったり、相手に嫌な思いをさせてしまうこともあります。
本記事では、アジアの様々なタブーの中でも、特に知っておきたいタブーをいくつか紹介します。
この記事を読むことで、知らず知らずのうちにタブーを犯してしまうリスクを減らし、またタブーの裏側にあるアジアの価値観を学ぶことができます。
タブーなふるまい
日本では当たり前の行為でも、アジアではタブーとなってしまうふるまいは数多くあります。
頭を触る
対象地域:アジア全域
人の頭を触るという行為は、アジアの多くの地域ではタブーです。
頭は神聖な部分と考えられているため、他人が気軽に触ってはいけません。
タイなどでは、頭は精霊の宿る場所だと信じられています。
海外では、日本の感覚で子供の頭を撫でてしてしまわないよう注意が必要です。
大声で怒鳴る、騒ぐ
対象地域:インドネシア、マレーシア、ラオス、カンボジアなど
これらの地域では、人前で強い感情や怒りをあらわす人を「礼儀に反する」「自分を抑えられない」などと考える傾向があり、軽蔑の対象にもなり得ます。
また、インドネシアやマレーシアでは、激しく怒り狂う人は「何かにとり憑かれているのでは」と考え、霊媒師のところへ連れていかれてしまうこともあります。
人前で恥をかかせる
対象地域:インドネシア、タイ、フィリピンなど
人前で恥をかかせてプライドを傷つけることは、最もしてはならない行為の一つと考えられています。
たとえ相手が間違っていた場合でも、人前では間違えを指摘せず、あとで本人だけに伝えます。
仕事で大勢の人の前で誰かを叱りつけるといった行為は論外です。そのような経験がほとんどない人たちは、大変なショックを受けます。
実際に、報復として殺し屋を使って暗殺したという話や、黒魔術などの呪いをかけるという話もあるほどです。
左手での握手やものの受け渡し
対象地域:マレーシア、インドネシア、タイ
これらの地域では左手は「不浄の手」だと考えられています。
左手でものを渡したり、握手をしようとすると、露骨に嫌な顔をされることがあります。
また、フォークやスプーンを使わず手で食事を食べる場合、必ず右手で行います。
人差し指で人や物を指さす
対象地域:マレーシア、インドネシア、ブルネイ
人差し指を使って指さすのは無礼なこととされます。どうしても必要な場合は、親指で指します。
日本でも人を指さすのは失礼だという感覚はありますが、これらの地域ではその認識はさらに徹底されており、人だけでなく物にも親指を使うこともあります。
足の裏(靴の裏)を見せる
対象地域:タイ、ラオス、インドネシアなど
足の裏は不浄と考えられているため、足裏を人に見せるのはタブーです。
寺院などで裸足で参拝する時でも足の裏を仏様には見せないようにします。普段も足の裏が他人に向くような仕草をしないようにしています。
机の上に足を乗せるのもNGです。
腰に手をあてるポーズ
対象地域:インドネシア
人と話しているときに腰に手をあてるポーズをとると、怒っていると思われたり、攻撃的な態度だと受け取られます。
腕を組むという行為も威圧的に見られるため、避けた方が無難です。
電車やバスへの飲食物の持ち込み
対象地域:シンガポール、韓国
電車やバスでの飲食を原則禁止としている国は多いですが、シンガポールと韓国は特に厳格です。
シンガポールの場合、電車やバスの車内、駅構内などで飲食をすると罰則の対象になるのはもちろん、飲食物を持ち込むこと自体が禁止されています。
韓国のソウルでは、2018年1月からテイクアウト用カップに入ったドリンクをバスに持ち込むことが禁止されました。カフェが多いソウルですが、テイクアウトのドリンクを持ったままバスに乗り込もうとすると乗車拒否されてしまいます。
軍や警察の関連施設の撮影
対象地域:アジア全域
アジアに限らず、ほぼすべての地域では軍や警察の施設を勝手に撮影するのは非常に危険な行為で、場合によってはスパイなどの疑いをかけられる可能性があります。
他にも、空港、宗教施設、政府施設、バス、電車、博物館、美術館などは撮影禁止となっている国も多いため、撮影前に確認したほうが安全です。
露出の多い服装をする
対象地域:アジア全域
アジアでは全般的に肌を露出した服装はよく思われず、場所によってはいやな顔をされたり、歓迎してもらえないことがあります。特に、イスラーム教徒の多い地域では、肌の露出の多い服装をしている女性は奇異の目にさらされることも。
また、役所や宗教施設に行く際も、肌の露出の多い恰好をしていると施設に入れてもらえなかったり、まともに対応してもらえないこともあります。
喫煙
対象地域:フィリピン、シンガポール、タイ
世界的に禁煙の流れがすすんでいますが、シンガポール、タイ、フィリピンは特に規制が厳しいといえます。
シンガポールは、指定された喫煙場所以外は全面的に禁煙です。屋内だけでなく、公園やビーチなど屋外も多くの場所が禁煙です。喫煙エリア以外での喫煙が発覚すると、最大1,000シンガポールドル(約10万円)の罰金が科せられます。
フィリピンでもドゥテルテ政権時の2017年から厳格化され、公共の場は全面禁煙となり、罰金の対象です。
タイでも屋内は全面禁煙、屋外も主要なビーチは禁煙エリアに指定されており、罰金もあります。
ドラッグ
対象地域:中国、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム、シンガポール、フィリピンなど
アジアでは麻薬、覚醒剤、大麻などのドラッグの規制が非常に厳しく、それらの製造、密売、所持などが発覚した場合には、死刑や無期懲役を含めた非常に重い処罰の対象となります。国によっては、不法保持者はその場で射殺されることもあります。
外国人にも適用され、知人に頼まれて荷物を預かったつもりが、ドラッグの運び屋として利用されて逮捕、さらには死刑判決を受けてしまう…という恐ろしい事例も複数あります。
食事のタブー
アジアには厳格なテーブルマナーはあまりありませんが、中にはマナー違反とみなされてしまう行為があるので注意が必要です。
食器を持ちあげる・食器に口をつける
対象地域:タイ、ベトナム、ラオス、韓国、インドネシアなど
食事の際に食器を持ち上げたり、食器に直接口をつけることはマナー違反とされます。
汁物を飲む場合も食器に直接口はつけず、食器をテーブルに置いたままでスプーンを使って口に運びます。
ただし、中華料理店では例外的にこうしたマナーは守らなくてもOKです。
麺をすする
対象地域:タイ、インドネシア、ベトナムなど
これらの地域では、ズルズルと音をたてて麺をすするのは行儀が悪いとみられます。
麺類を食べる時は、箸で麺をつかんでレンゲやスプーンで補助しながら音が出ないように少しずつ口に運びます。
アジアの麺類は、日本よりも短いものが多く、すすらなくてもうまく食べることができます。
海外に増えつつある日本のラーメン店では、日本式に音をたててすすって食べても問題ありません。
イスラーム教徒の前で酒を飲む、豚肉を食べる
対象地域:イスラーム教徒の多い地域
イスラーム教徒にとって豚は不浄の動物であり、タブーな食材です。
食事の席でイスラーム教徒が同席している場合は相手を不快な気分にさせないよう、豚肉を食べたり飲酒をするのは控えた方がよいです。
また、インド系の住民に多いヒンドゥー教では、神聖な動物とされている牛を食べることはタブーです。
タブーな話題
アジアの多くの国では、「触れられたくない話題」というものがあります。
触れてはいけない歴史
対象地域:アジア全域
アジアには、国を二分してしまうような国内の悲惨な出来事(内戦、民族衝突、イデオロギー衝突など)を、この50~60年以内に経験している地域が多いです。
そうした出来事は、勧善懲悪で決着が着いた例はほとんどなく、真相がわからないまま葬られたり、悪が裁かれないままになっていたりと、現在も人々の中に禍根を残しています。あまりにも多くの人が関係しており、その話題を口にすることで人々の心を再び深くえぐってしまう可能性があります。
国がメディアにその話題を出すことを規制しているところもあります。
隣国との関係
対象地域:アジア全域
隣国とは領土問題、資源問題、民族問題などを抱えているケースが非常に多いです。
表面的にはうまくやっているように見えても、たいていの場合は隣国と様々な問題を抱えており、ほとんどの国で隣国との関係は非常にセンシティブなトピックです。
普段の会話の中で隣国を批判する言動をしていたら、実は隣国出身の人がその会話を聞いていて喧嘩に発展してしまうということもあります。
王室批判
対象地域:タイ
タイ人は国王を非常に尊敬しており、王室に関する批判や軽はずみな発言をしてしまうと不敬罪に問われることがあります。これにはSNSでの発言も対象になります。
外国人も対象になりますので、注意をする必要があります。
タイでは毎日朝と夕方に公共の場所で国歌が流れ、映画館では上映前に国王賛歌が流れます。どちらの場合も起立して国王への敬意を示すことが決められています。これを怠ると、やはり不敬罪に問われることもあります。
ただ、実際には最近は起立しない人も増えてきています。
政治批判
対象地域:中国、ベトナム、ミャンマー、カンボジアなど
これらの地域では、公共の場で政治批判をすると取り締まりの対象となることもあります。外国人でも拘束される可能性があるため、慎重に判断しなければなりません。
入国時には、政府や体制批判の印刷物やdvdなどの持ち込みも禁止となっています。
男性に身長を聞く
対象地域:フィリピンなど
アジア人の身長は世界的に見ると比較的低く、身長を気にしている人は意外と多いものです。
特にフィリピン人男性は身長を気にする人が多く、フィリピンでは男性に身長を聞くことはとても失礼なこととされています。
宗教に関するタブー
アジアでは様々な宗教が熱心に信仰されており、宗教にかかわるタブーも多くあります。
祈りの時間の訪問や電話
対象地域:イスラーム教徒の多い地域
イスラーム教徒は「夜明け前」「昼12時ごろ」「午後3時ごろ」「日没後」「夜8時ごろ」の合計5回お祈りを行います。
この時間帯に電話や訪問があると大変迷惑です。そのため、祈りの時間の1時間程度は訪問や電話をしないようにした方がよいでしょう。
女性に対して男性から握手を求める
対象地域:イスラーム教徒の多い地域
男性と女性の初対面の場合、男性から女性に対して握手を求めるのは失礼にあたるとされます。
紹介をされても、女性から握手を求められるまでは男性は自分から手を差し出さずに待ちます。
異性装
対象地域:イスラーム教徒の多い地域
これらの地域では、国または州で定められたイスラーム法(シャリーア法)において、異性装(男性が女性の恰好をしたり女性が男性の恰好をすること)は違法とされています。外国人であっても罰金刑等の有罪になることがあります。
たとえばアニメのコスプレをしていたとしても、異性のキャラクターになることが異性装とみなされる可能性があるので注意が必要です。
女性が修行僧に触れる
対象地域:仏教徒の多い地域
敬虔な仏教徒の多いタイ、ラオス、カンボジアなどでは修行僧を見かけることがよくあります。
しかし、女性は修行僧には直接触れてはいけません。修行中に女性と直接的な接触を持つことは、戒律を破ったことになってしまうためです。修行僧を見かけても、握手を求めたり、触るのは絶対にやめましょう。
宗教施設で騒ぐ、露出の多い服装をする
対象地域:アジア全域
アジアの人は皆とても信仰深く、寺院、教会、モスクなど様々な宗教施設があります。
信者でなくとも訪問できる宗教施設は多数ありますが、そこにいる信者の邪魔になったり不快感を与えないためにルールを守る必要があります。大声で騒いだり、肌の露出の多い服装などはマナー違反です。
離婚
対象地域:フィリピン
フィリピンには離婚という制度が存在しません。
これはカトリックの「夫婦は死ぬまで添い遂げることが当然」という考えに基づいています。
フィリピンの家族法では婚姻に関する法律はありますが、離婚に関する法律は存在しません。
そのため、夫婦関係が既に終了しているものの、離婚しないまま他の人と重婚しているケースも少なくありません。
婚姻関係を結んだ相手と別れる唯一の方法は、婚姻取り消しの裁判手続きをして婚姻を「なかったことにする」ことです。ただし、条件は厳しく費用も高額なため、フィリピンで離婚をするというのは非常にハードルが高いことなのです。
まとめ
アジアには意外にタブーなことが多く、驚くような事例もあったのではないでしょうか。
ふるまい、食事、話題など様々なものにタブーが存在していますが、これらを知らなければ無意識にタブーな行動を取ってしまうことがあるかもしれません。
タブーには、その地域の慣習、歴史、宗教など様々なものが影響しています。ルールを守ってタブーを避けることは、トラブルに巻き込まれないように自分自身を守るというだけでなく、相手や相手の国の価値観を尊重して思いやるということでもあります。
アジアのタブーについて知るうえで参考になれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。