赤子の妖怪
妊娠や出産で亡くなった女性の妖怪があれば、生まれてこられなかった赤ちゃんの妖怪もいます。
赤子の妖怪には、人々に恨みを持って襲う妖怪と、幸福や金品をもらたすありがたい妖怪という全く異なるタイプに分かれます。
嬰霊(台湾)
中絶によって死亡し、成仏できずに母親に復讐する胎児の霊。特に、人工中絶による胎児の嬰霊は、女性や家族を祟ると考えられています。
1985年までは中絶が合法ではなかった台湾の社会状況を反映したものだと考えられます。
中絶に対して罪の意識を持つ者が嬰霊に許しを請い、嬰霊の供養を行うことがあります。
チャナック(フィリピン)

中絶に失敗して死んでしまった女性のお腹から出てくる赤ん坊、もしくはカトリックの洗礼を受けずに死んでしまった赤ん坊の妖怪です。
赤子の声で泣いて、近づいた者を襲い、食い殺してしまいます。特に、女性を中絶に追いやった男性に恐ろしい復讐をするともいわれます。
カトリック教徒の多いフィリピンでは中絶はタブーとされているため、中絶をしないようにと、このような恐ろしい妖怪が考え出された可能性がありそうです。
子泣き爺(日本)
一見すると赤ん坊のような格好と泣き声をして人の助けを呼びますが、よく見るとお爺さんの風貌です。
哀れに思って抱き上げると急に重くなり、離れられずにそのままその人の命を奪ってしまいます。
クマントーン(タイ)
「腹のなかの男の子」という意味の子供の守護霊。クマントーンが家に入れば、その家族は幸運に恵まれるといわれる、タイの座敷童子のような位置づけです。
もともとは、死んだ胎児を取り出して、乾燥してミイラ化させた後、金粉を張って作られたお守りでした。現在は、もちろん本物の胎児は使いません。
タイでは、家でクマントーンにお菓子やご飯をお供えし大切に祀ります。
トゥユル(インドネシア)

中絶させられた赤ん坊の妖怪で、大きな目に緑色や灰色の肌をしています。
トゥユルには所有者がいるとされ、所有者のために他人から少しずつ金品を盗んできて、所有者をどんどん裕福にしてくれます。そんなトゥユルを所有するための呪術も存在します。
インドネシアでは、あったはずのお金や貴重品が知らぬ間になくなったり減ったりすると、トゥユルの仕業ではないかと考えることがあります。
子供の妖怪

では次に子供の妖怪をみてみましょう。
子供の妖怪も赤子の妖怪と同様、幸福をもたらすタイプと、人を迷わせる悪いタイプの妖怪とに分かれます。
座敷童子(日本)
東北地方でみられる、家の中にいる着物を着た子供の妖怪。
座敷童子のいる家は繁盛しますが、座敷童子が去るとその家は没落するといわれます。座敷童子はめったに姿を見せず、その家から去る時にだけ姿を見せます。
座敷童子の伝承には、昔の間引きの風習が影響しているとも指摘されています。間引きで亡くなった遺体は墓ではなく、玄関の敷居や土間などの下に埋められたため、これが座敷童子になったというものです。
シッキー/シチマジムン(沖縄)
暗闇に潜み、人を道に迷わせて遠くに連れ去るといわれる子供の妖怪。
はっきりした形は見えずぼんやりしていますが、立ち塞がって人々の山路の通行を妨害します。シッキーのせいで何日も迷子になり、時には墓穴に閉じ込められることもあるそうです。
魔神仔〔モシナ〕(台湾)

山林に入った人の方向を見失わせて、見知らぬ場所へ連れていく子供の妖怪。
赤い肌で全身に灰色の毛が生えており、猿のような見た目といわれます。
台湾では、山中で老人や子供が失踪するという事件が多発しており、魔神仔が人を山深くへと連れ去るのだと信じられています。台湾には魔神仔の名前の付いた地名が多いです。
紅衣少女孩(台湾)
魔神仔と同様、山で人を迷わせる妖怪で、赤い服を着た少女のような見た目ですが、顔は老人だということです。
台湾では、1990年代に台湾全土を震撼させた怪奇事件をもとにした「紅い服の少女 第一章 神隠し」「紅い服の少女 第二章 真実」という映画が上映され社会現象を巻き起こしました。
現在の台湾では非常に認知度の高い妖怪です。
コンティン(ベトナム)
若くして亡くなった少女の霊。木を住処としていて、キャッキャッと笑いながら木の下を通る人を迷わせ、やがて魂を奪うとされています。
コンティンの住む木を切り倒すと呪いが解けるといわれます。
小さい人
子供ではないものの、他にも小さな妖怪もいろいろと確認されています。
小人の妖怪は、自然と深いつながりを持つものが多いようです。
ドゥウェンデ(フィリピン)

フィリピンの座敷童子のような存在で、家に住み着く小人の妖怪ですが、実は老人です。
子供にしか見ることができないといわれ、ドゥウェンデが見える子供は一緒に遊んで友達になることもあります。
また、ドゥウェンデにごはんをあげるなどして丁寧に扱うと、その家を守ってくれるようになります。
オラン・ペンデク(インドネシア)
インドネシアのスマトラ島に住む、小柄(身長80cm~1.5m)な生物。
全身がダークグレーの毛で覆われ、大きな腹と長い手を持っており、オランウータンのような見た目ですが、木には登りません。臆病な性格のわりに、木を倒してしまうほどの怪力で、何でも食べる雑食です。
実際に足跡も発見されており、未知の霊長類ではないかという説もあります。
木客(中国)

福建省に存在したといわれている謎の生物で、顔は人間、体は猿で毛に覆われ、赤い目をしています。
山の奥深くに住んでいて、普段は人間の子供のような姿をしています。姿を自在に変化させることができるようですが、めったに人前には現れません。
コロポックル(日本)
アイヌの伝承に登場し、アイヌ民族が住むよりもさらに前から北海道に住んでいた赤ん坊ほどの大きさの小人族です。
フキの葉の下に小さな竪穴の家をつくって住んでいたとされ、いたずらなどをしない大人しい人たちでした。
動きが素早く、狩猟採集や漁が得意で、アイヌの人々とも物々交換などをして共存していましたが、ある時アイヌのいたずらに怒って姿を消してしまったようです。




