この記事では、タイのおすすめ映画を新旧合わせて10本ご紹介します。
タイ映画は日本でも話題になることが多く、日本で上映されたりDVDや配信サービスなどで観ることができるタイ映画の数は非常に多いです。
そんなタイ映画の特徴は、とにかく質の高い良作映画が多いこと。特に脚本が素晴らしく、最後まで飽きさせない作品ばかりです。
「タイ映画が観たい!」と思ったら、本記事で紹介しているタイ映画を参考にしてみてください。
タイ映画でよく描かれるテーマ:
霊、精霊信仰、怪奇現象、LGBTQ、家族、社会問題、歴史、恋愛、スポーツなど
デュー あの時の君とボク
原題:Dew
製作年:2019年
製作国:タイ
監督:チューキアット・サックヴィーラクル
LGBTQに寛容といわれるタイは、バンコクなど都心部では多くのLGBTQ当事者たちを目にしますが、田舎へ行くとLGBTQへのスタンスは大きく異なります。
本作の主な舞台となるのは、まだ偏見が根強く残っていた1990年代の閉鎖的な雰囲気のタイの田舎町。そこで出会った少年2人のキラキラした時間と、周囲からの偏見と圧力に苦しむ残酷な現実とが交差します。
最後の2人の選択にはなんとも考えさせられます。
韓国映画『バンジージャンプする』のタイ版リメイクですが、タイらしい雰囲気に溢れ、全く趣きの異なる作品になっています。
フェーンチャン ぼくの恋人
原題:MY GIRL
製作年:2003年
製作国:タイ
監督:365フィルムズ・プロダクションズ
タイの都心で働く主人公のジアップは、幼馴染のノイナーが結婚すると聞き、故郷で過ごした少年時代を回想します。初恋相手でもあるノイナーとの淡い思い出や、悪ガキたちと過ごした日々が鮮明によみがえります。
子供時代、些細なことが大冒険になり、仲間と一緒にくだらない遊びに全力を尽くすことが世界の全てだった・・そんな子供時代の典型的な日常風景が丁寧に淡々と描かれます。
また、ところどころで流れるタイのヒット歌謡曲もゆるい雰囲気を演出しています。
画面は全体的にパステルの淡いトーンの色合いでまとめられ、どのシーンを切り取ってもすべて絵になるように配色や配置が計算されています。
全体的なまったり感はどことなく台湾映画の雰囲気を感じさせ、子供たちも風景も空気感も全てが愛らしく、懐かしい気持ちにさせてくれます。
少し昔の時代を描いた映画は現在でも制作可能ですが、画質があまりにも綺麗すぎると雰囲気が出ないという欠点もあります。このくらい(2000年代頃)の時期までに作られた作品の画質が、ちょうどよいのかもしれません。
メナムの残照/ クーカム
原題: Khu Kam/Sunset at Chaophraya
製作年: 2013
製作国: タイ
監督: キッティコーン・リアウシリクン
戦時下のタイを舞台とした日本人兵士とタイ人女性との悲恋の物語。
タイの女性作家トムヤンティ原作の『メナムの残照(原題:クーカム)』は、これまで6回のテレビドラマ化と4回の映画化がされるほどタイではよく知られた作品です。
太平洋戦争下のバンコクに駐留し、ビルマへの行軍を待つ日本軍の小堀大尉は、地元の美しい娘アンスマリンに恋をしますが、アンスマリンは日本を憎み、日本人である小堀のことも頑なに拒否します。
日タイ友好の象徴として二人が結婚してからもアンスマリンは心を開かず、小堀は彼女を一途に愛し続けますが、そんな二人にも戦争の影が迫ります・・・。
戦時中のタイ側からみた日本との関係性は微妙なものであり、その危うさはこの作品にも反映されています。
当時のタイは日本の友好国で、タイは独立国としての地位を尊重され、タイ政府が日本の戦争へ協力するという内容の条約も締結されていました。
しかし表面的には日本に協力する姿勢を見せながら、裏で抗日レジスタンス活動を行っていたタイ人は国内外に多くいました。
本作でも日本に友好的なタイ人だけでなく、アンスマリンはじめ日本に反発するタイ住民がスパイ活動等を行う様子が描かれており、当時のタイの複雑な状況とそれに翻弄される人々の様子が描かれています。
そんな日本への愛憎入り混じる複雑な感情を描くメナムの残照ですが、小堀大尉だけは最後まで誠実な青年として描かれており、彼のイメージが戦後のタイから見た日本人イメージに多大な影響を与えたと言われます。
ちなみに、タイでは最も有名な日本人の名前が「コボリさん」なのだそうです。
ナンナーク
原題:NANG-NAK
製作年:1999年
製作国:タイ
監督:ノンスィー・ニミブット
タイ映画のレベルの高さを世界に知らしめた作品であり、『メーナーク・プラカノン』という、タイでは非常に有名な民話を映画化したものです。
タイのプラカノンという村に住んでいたナーク夫人は、夫の兵役中に出産し命を落としてしまいます。しかし夫恋しさから霊となり、妻が生きていると信じている夫とまた一緒に暮らし始めるのですが…という物語です。
ホラー映画であることを忘れてしまうほど映像が美しく、落ち着いたトーンと丁寧な人物描写によって映画の世界に惹き込まれていきます。ホラー映画というジャンルに分類されますが、とにかく悲しく美しい物語です。
昔のタイの田舎が舞台でありながら、ナーク夫人の髪型がベリーショートなのが新鮮です。
タイでは、霊かどうかを見分ける時に「股の間から覗いて見る」という方法をとります。ナンナーク以外の作品でも、タイのホラー映画ではこのようなシーンが頻繁に登場します。
愛しのゴースト
原題:Pee Mak
製作年:2013年
製作国:タイ
監督:バンジョン・ピサンタナクーン
ナンナーク同様、メーナーク・プラカノンをテーマとした作品ですが、こちらはコメディホラーとして全く違う作風に仕上がっています。
ベースのストーリーは同じですが、ところどころに笑える要素がたっぷりとあり、全世代が楽しめるエンタメ性満載の作品です。
タイ国内では歴代興行収入記録を塗り替えるほどの大ヒットとなり、その後日本でも上映されました。
霊に関する従来の価値観を覆す斬新なラストが待っています。
プアン/友だちと呼ばせて
原題:One For The Road
製作年:2021年
製作国:タイ
監督:バズ・プーンピリヤ(ナタウット・プーンピリヤ)
ニューヨークでバーを営みながらも、どこか投げやりで空虚な日々を過ごす主人公。
そんなある日、かつて親しく暮らした友人から連絡が入り、余命わずかであることを知らされます。
その友人が望んだのは、過去の恋人たちに別れを告げる旅に付き合ってほしいというものでした。
ふたりはタイ国内を巡りながら、積み重なった記憶と感情に少しずつ向き合っていきます。しかし、感情というものは必ずしも時間が解決してくれるとは限りません。
感謝や懐かしさだけでなく、言葉にできない後悔や罪悪感、消えない憎しみもそこにはありました。
最後の再会だったとしても、綺麗な終わり方ができるわけではないし、すべてを受け入れられるわけでもありません。
むしろ、自分自身のずるさ、弱さ、カッコ悪さを突きつけられるような瞬間が訪れます。
でも、きれいにまとまらないからこそ、この作品には現実に近い重みと人間らしさが感じられます。
切なさや寂しさのなかに、静かな温かさと愛おしさが残る作品です。
心霊写真
原題:Shutter
製作年:2004年
製作国:タイ
監督:パークプム・ウォンプム、バンジョン・ピサンタナクーン
カメラマンである主人公は、大学の友人の結婚式の帰り道に車で人を轢いてしまったにも関わらず、そのまま逃げてしまいます。それ以来、心霊写真をはじめ様々な怪奇現象が身の回りに起こるようになり、恐怖に怯えながらもその真相を追っていきます。
一見よくありそうな設定・・かと思いきや、そこにはまるで想像もつかないほどの深い因縁が存在していたことが明らかになり、深い闇へとどんどん堕ちてしまいます。
前半は暗くじっとりとしたジャパニーズホラーのような雰囲気ですが、後半は矢継ぎ早に畳みかけるストーリー展開で、ミステリーの謎解きのようなスピード感もあります。
貞子さながらの強烈なキャラが登場したり、斬新なビジュアル演出のシーンも数多く、ホラー映画として「楽しむ」ための仕掛けも満載です。
ストーリー上で因果応報がすべてきれいに完結するため、観賞後のモヤモヤ感は一切なく、ホラー作品でありながらも最後はすっきりとした爽快感すら覚えます。
女神の継承
原題:The Medium
製作年:2021年
製作国:タイ・韓国
監督:バンジョン・ピサンタナクーン
精霊信仰の伝統が息づく東北タイの自然に囲まれた小さな村。
この地域でシャーマンの家系に生まれたミンは、体調不良や奇怪な行動が目立ち始めるようになります。「バヤン」という女神がミンに乗り移り、シャーマンの能力の継承が始まったのではないかと思われていましたが、事態は想像を超える恐ろしい展開に向かいます。
モキュメンタリー(ドキュメンタリーに見せかけるフィクション)の手法をとっており、地方の実際のコミュニティをそのまま撮影しているかのようなリアルさがあります。
特に参拝や儀式のシーンは、どこまでが実際に行われているもので、どこからが映画のためのものなのが、あまりにも自然でその境界線がわからなくなります。そのリアルさゆえ、本作が迎える戦慄の展開すら日常の延長線上に起こりうるものなのではないか…と思わせる恐ろしさがあります。
「何か」に取り憑かれている際の俳優陣の鬼気迫る演技は、表情や体の動きの細部に至るまでが非常にリアルで、演技に見えません。
アジアのホラー映画にありがちなジャンプスケア(大きな音や映像などで驚かせる手法)はほとんどなく、ストーリーでしっかりと恐怖心を掻き立てています。
序盤に登場するささいな会話や違和感などはきれいに伏線回収される作りこんだ脚本であることは間違いないですが、観る者のスタンスによってラストの解釈が変わりそうな余地も残しています。
霊とは目に見えない存在であり、怪現象がどこまで霊によるもので、どこからが人間によるものなのか、実際には区別は難しいものです。この作品でも、視聴者が「超自然」や「目に見えないもの」をどう捉えるかによって、その解釈が委ねられているようです。
バッド・ジーニアス 危険な天才たち
原題:Chalard Games Goeng/Bad Genius
製作年:2017年
製作国:タイ
監督:バズ・プーンピリヤ(ナタウット・プーンピリヤ)
成績抜群の主人公が、その才能を活かして替え玉受験を請け負うビジネスを始めます。
危険すぎるビジネスは果たして成功するのか…どんどんスケールアップしていくハラハラドキドキの展開に目が離せません。
タイでは学歴競争がヒートアップしていると言われますが、そんなタイの社会背景も反映しています。
映画の中で、天才二人が語る「私たちは生まれながらの負け組」というセリフがあります。
タイでは、前世で徳を積んだ者は現世で恵まれた環境に生まれるという仏教的価値観があります。天才2人のセリフや本作の結末には、そんなタイの伝統的な価値観が少なからず影響しているようにも思えます。
ゴースト・ラボ: 禁断の実験
原題:Ghost Lab
製作年:2021年
製作国:タイ
監督:パウィーン・プーリジットパンヤー
霊の存在を解明しようとする若い医師二人が、実験にのめり込むあまり一線を超えてしまい…という衝撃のストーリー。
一筋縄にいかない予想を超える展開の連続で、ラストまで全く飽きさせません。
伝統的価値観が強く残るタイの農村地域などでは、現在も目に見えない力を肯定する習慣が残っていますが、タイの都心部では日本と変わらず科学的に物事を捉えるのが普通です。
本作もタイの現代人的視点から科学的に霊を検証しようとしているため違和感なく観ることができますが、ラスト付近で急にファンタジー要素が見られるのはタイ映画らしさかもしれません。
まとめ
新旧様々なタイプのタイ映画をご紹介しました。
もともとタイ映画はホラー作品が非常に豊富でしたが、近年はBL作品の快進撃に目を見張ります。BL映画をきっかけにタイやタイ映画に興味を持つこともあるかもしれません。
タイ映画は、「よくある展開」に落とし込んで満足するような作品は少なく、一ひねりも二ひねりもある緻密に作りこまれたストーリー展開のものが多いです。
タイ人自体が実は非常に繊細でバランス感覚に優れているという特徴があるので、タイの人たちが作り出す映画にもきっとそんな国民性が反映されているのだと思います。
本記事を通してタイ映画やタイ社会に興味を持っていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。














